生涯スポーツとレスリングについて
生涯スポーツとは
近年、生涯スポーツという言葉が当たり前のように使われるようになってきました。既に皆さんはこの言葉をよくご存じかと思いますが、ここで改めてこの言葉の意味を確認してみたいと思います。
生涯スポーツとは文字通り「一生涯にわたって取り組むスポーツ活動」の考え方です。スポーツは人間の生み出した文化であり、それは様々な意義を持って取り組んでいくことが出来るものです。しかし、最高の競技レベルだけを追い求めてしまうと、一部の若い人が中心になってしまいます。スポーツが人間の文化である以上、老若男女あらゆる人達によって生涯を通じて取り組まれるべきであるという考え方が「生涯スポーツ」なのです。
生涯スポーツの歴史
歴史的には、1960年代以降、ノルウェーやドイツなどヨーロッパ諸国で生涯スポーツの基盤になる考え方が発展し、1972年にイギリスで「みんなのスポーツ(sports for all)」運動が展開されました。これらは、エリートの競技スポーツを第一の道とすれば、大衆が余暇や健康増進などのために行う第二の道としてスポーツをとらえた点に特徴がありました。
海外の動向は日本にも影響を与え、1970年代から80年代にかけて文部省の諮問機関である保健体育審議会から生涯体育・スポーツの普及についての答申が示されるようになりました。このような中でマスターズの競技スポーツも徐々に普及していくこととなり、1978年には第1回日本マスターズ陸上競技会が開催されました。以後、現在まで各競技団体で様々なマスターズ大会が行われるようになってきています。
生涯スポーツの現況(競技大会を中心に)
生涯スポーツといっても、ウォーキングのように日頃の健康保持増進を目的とした運動から、マスターズ大会のようにその年齢なりに競技スポーツとして取り組むものまで様々あります。ここでは、当連盟に直接関わりのある各競技のマスターズ大会についていくつかの事例をご紹介していきましょう。
■日本スポーツマスターズ大会
日本スポーツマスターズ大会は、スポーツ愛好者の中でも競技志向の高いシニア世代を対象とした、全国で初めての総合スポーツ大会です。(財)日本体育協会の主催で、参加者がお互いに競い合いながらスポーツに親しむことにより、生涯スポーツのより一層の普及・振興を図り、生きがいのある社会の形成と、健全な心身の維持・向上に寄与することを目的としています。毎年9月に開催され、2007年大会を例に挙げると、水泳、サッカー、テニス、バレーボール、バスケットボール、自転車競技、ソフトテニス、軟式野球、ソフトボール、バドミントン、空手道、ボウリング、ゴルフの計13競技に7308名の選手・監督が参加しました。出場年齢資格やルールは各競技ごとに定められています。
■社団法人日本マスターズ陸上競技連合)
各スポーツ競技団体にもマスターズ組織は沢山存在しますが、まずはその先駆けであり、大きな発展を遂げた陸上競技をご紹介しましょう。
日本のマスターズ陸上競技大会は1978年に初めて開催され、1980年には織田幹雄氏(日本初の五輪金メダリスト)を会長に日本マスターズ陸上競技連合が創設されました。以降、毎年全日本大会が開催されています。また、各都道府県に地域マスターズ陸上競技連盟があり、それぞれ大会を開催しています。年齢は、参加資格が男子35歳以上、女子30歳以上で、5歳刻みで100歳以上のクラスまで設定されています。2007年には北海道で102歳の大宮良平選手が出場されています。
■社団法人日本マスターズ水泳協会
水泳競技もマスターズとして大きく発展を遂げています。この組織は『健康・友情・相互理解・競技』をモットーに水泳を楽しむことを目指しています。年齢は国際的には25歳以上と規定され、国内では、18歳〜24歳からはじまり、25歳より上は5歳ごとに100歳以上まで区分されており、若い年代から区分があるのが特徴です。競技人口は2007年現在で45000名を超え、また男女比もほぼ半々という特徴があります。高齢者を見ると、2007年度の80歳代の登録者は647名、100歳以上の登録者も3名います。公式競技会は地方も含め年間約90大会、参加者はのべ12万人もおり、マスターズ水泳が盛んであることが伺えます。
■マスターズ甲子園
プロ野球では往年の名選手たちが試合を繰り広げて人気の「プロ野球マスターズリーグ」が有名ですが、アマチュアの世界でもマスターズ甲子園というのがあります。これは、元高校球児だった人達が甲子園出場・非出場、元プロ・アマチュア等のキャリアの壁を超えて出身校別に同窓会チームを結成し、全員共通の憧れであり野球の原点でもあった「甲子園球場」で白球を追いかける夢の舞台を目指そうというものです。地方予選を勝ち抜いた8チームが「父の日」に甲子園で交流試合を行います。また、全ての高校硬式野球部元関係者を対象としたキャッチボールプログラムも行われるなどユニークな大会です。
■愛知マスターズバスケットボールリーグ
地方での独自の取り組みとして注目すべきは、愛知マスターズバスケットボールリーグです。愛知県を中心に参加資格35歳以上で活動する「オヤジ」の為のリーグという触れ込みで、リーグを通じ交流を深め、共にオヤジになっても技術力や競技力に向上心を持ってチャレンジし続ける事の出来るリーグを目指しています。
■武道の場合
日本の武道はスポーツとしてではなく、もともと実践的な武術としての発展を遂げてきたため、あらゆる年齢層の人々が行うことが一般的です。例えば、柔道や剣道の町道場では中高年の人達が当たり前のように稽古を積んでいます。また、武道は実践技術だけではなく形や演舞などもあり、身体運動的要素も持ち合わせているので、生涯スポーツ的観点からみても注目すべきでしょう。
競技としては柔道を例に見ますと、全国柔道高段者大会が古くから続いており、この大会は中高年の実力者が集う大会として有名です。最近では、これとは別に全日本マスターズ柔道協会()が組織され、全国大会が開催されています。
■ザ・おやじ・ファイト
同じ格闘技では、ボクシングの「ザ・おやじ・ファイト」がユニークな企画として注目されています。これは、一般企業が運営する33歳以上のボクシングスパーリング大会で、プロ・アマ問わず参加できるものです。クラスは33歳以上、47歳以上に分かれ、別にプロやトップアマのクラスもあります。また、試合は入場料を取るプロ興行に近い形で行われますが、参加者はプロとしてではなく、逆に出場費として自身でチケット10枚を購入するという方式を採っています。実質的に出場者が自分たちでチケットを手売りする形で「おやじ」達の戦いの場を作っていく、という発想なのでしょう。
以上のように各競技のマスターズ大会は一般的な競技組織運営からユニークな発想のものまで、非常にバラエティーに富んだ活動を繰り広げていることがよく分かると思います。
生涯レスリングの歴史と現況
日本レスリング界における中高年大会の歴史は意外に古く、昭和40年初頭に設置された全日本社会人選手権大会「壮年の部」がその嚆矢といえます。しかし、実際に参加する人達はごく一部に限られ、当時の状況では現役引退後もレスリング活動を続ける人は希でした。
その流れが変わってきたのが1990年代です。1992年にコロンビア・カリで第1回世界ベテランズレスリング選手権大会が開催され、米国在住の八田正朗選手が出場し優勝しました。八田選手は翌1993年第2回大会(カナダ・トロント)でも優勝し、さらに1994年第3回大会(イタリア・ローマ)では宮内孝憲選手、勝村靖夫選手が優勝したことで、少しずつマスターズレスリングに目が向けられてきました。
そして、2002年に全日本マスターズレスリング連盟が創設され、35歳以上のレスラーを対象とした全日本マスターズ選手権大会が初めて開催されました。第4回大会以降は少年大会と共催で行われ、チビッコのお父さんやコーチなども参加するアットホームな大会に生まれ変わりました。2008年1月に開催された第7回大会ではついに出場者が100名を超え、また、初心者の方のために「フレッシュマンズの部」も新設され、徐々に発展を遂げてきています。
